私は当時0歳と2歳の子供たちを連れて3年間、夫の海外赴任でドイツへ帯同しました。
よく、子供連れでドイツの海外赴任に3年間帯同した経験について話をすると
『お子さんは英語やドイツ語は話せるの?』
『小さいうちからバイリンガル教育したら英語もドイツ語もペラペラになれそう!』
と言われます。
小さいうちから海外生活を経験することによって、子供はどのくらい英語力が伸びるのでしょうか?
ただし、流ちょうに英語を話せるレベルまでは到達しませんでした。
今回の記事ではその結果を踏まえ、第二の言語獲得の過程や影響について、言語聴覚士の目線から分析してみました。
幼少期から海外で英語を学ぶと?
【海外生活を始めた当初の私達】
海外赴任したばかりの当時の私たちは、子供たちの英語能力が上がることをとても期待していました。
将来的には英語が必要と考えた私たちは、子供たちを英語メインで教育しているインターナショナル幼稚園に入園させました。
(ちなみに私たちの駐在期間は3年でしたが、幼稚園に入園できた期間は実質2年間です。)
子供たちがインターナショナル幼稚園に通ったのは、長女は3歳から5歳、次女は1歳から3歳の時でした。
海外英語教育の期待と現実
しかし現実は、長女も次女も思うように英語は上達しませんでした。
特に長女は、英語に対して強い苦手意識を持ってしまうようになったのです。
当時4歳だった長女は、先生やお友達との言語コミュニケーションが強く求められる時期でした。
しかし、思うように英語力が伸びない長女。
長女は周りのプレッシャーから自信を失い、英語そのものを避けるようになってしまいました。
毎日英語漬けの幼稚園に通ったとしても、家庭でも積極的な英語教育をしなければと文レベルで話せるまでに到達できなかったのです。
Mia ドイツ・ベルリン元駐在ママのみあです! 2019年に夫の海外赴任でドイツの首都ベルリンで3年間海外生活を経験しました。その際、当時3歳と1歳の娘を現地幼稚園へ入園させました[…]
言語聴覚士から見た言語発達
海外のインターナショナル幼稚園という、英語教育には最高な環境だったにもかかわらず、思うように英語力が伸びなかった子供たち。
もちろん家庭でも英語で話す練習をしたり、英語の動画を見せる試みをしました。
しかし、子供たちは「英語は嫌!」と強い拒否をしたため、家庭での英語教育は思うように進まなかったのです。
海外にいた当時、英語を習得させるのに必死だった私でしたが、帰国して冷静になってから言語聴覚士の視点で振り返ってみると、英語と日本語という異なる性質の言語を習得する難しさは、並大抵のレベルではないと気づいたのです。
通常、赤ちゃんから子供が言語を獲得するまでには、以下の過程を経て発達します。
言語発達年齢 | 理解する | 話す |
---|---|---|
0歳 | ・他者の働きかけに反応する ・発音を聞き取る | 「アーアー」「バブバブ」などの赤ちゃん語(喃語)を話す |
1歳 | ・物を介したやり取りができる ・50語程度を理解 | 「ワンワン」「マンマ」など意味のある単語が出現 |
2歳 | 身近なもののほとんどの単語がわかる | 「ブーブー(車)あった」など2語文 |
3歳 | 約1000語を獲得 | 幼児語の出現 |
4歳 | 約1500語を獲得 | 談話能力が発達する |
5歳 | ・約3000語を獲得 ・かなを理解し始める | 複雑な文を話せるようになる |
参考文献 廣瀬肇:言語聴覚士テキスト
※発達には個人差があります
まだ言葉を発せない0歳の赤ちゃんでも、周囲の発音をじっと聞き分けて、言葉を話す準備をしています。
1歳になると、「ちょうだい」「どうぞ」「わんわん」など、物を介したやりとりでコミュニケーションができるようになります。
2歳ごろには、「ママ だっこ」「あっち いく」など、名詞と動詞を組み合わせた2語文が出現します。これは、発音や身近な単語を理解しているからこそできるものです。
言葉を話し始める年齢が遅い子もいますが、3歳過ぎて話し始める子も少なくないため、心配する必要はありません。
3歳~4歳ごろの子供は、個人差はあるもの語彙や構文ともに著しい発達を遂げます。
3歳ごろには、約1000語の理解ができるようになり、その中には名詞や動詞だけでなく、「いつ」「どこ」「なに」「どう」に加えて「なぜ」などの疑問文を使った質問ができるようになっていきます。
4歳ごろには、正しい発音がほぼ完成し、発話とひらがなの関係を理解し始めるので、しりとり遊びを楽しめるようになってきます。これは、言葉が一つ一つの音から構成されているという意識が発達するためなのです。また、自分に起こった出来事や創造の出来事などを、時系列ごとに整理して語れるようになります。
5歳ごろには大人とほぼ同様に談話ができるようになり、そこから児童期にむけて、文字の読み書き能力の発達につながっていきます。
これはあくまで母語(=最初に獲得する言語)の発達過程の話であり、第二言語の獲得にはまた別の発達過程があると考えられます。
もし言語発達に重要な時期である乳幼児期に、2か国語以上の教育をしたらどのようになるのでしょうか?
我が家の場合、次女は0歳から2歳、長女は3歳から5歳に両親の日本語と幼稚園の先生の英語を聞いて育ちました。
これから、子供たちがバイリンガル教育を受けた結果を、帰国後以降の結果も含めてお伝えします。
海外の英語教育で子供たちが得たもの
上記で述べたように、そもそも言語発達の段階では大人並みに話せるまでに5年かかります。
もし幼稚園だけでなく、家庭でも積極的な英語教育の環境下にあれば、英語がペラペラになっていたことでしょう。
しかしその代わりに、日本語の発達は乏しくなると予想されます。
つまり、言語発達過程の段階では、2か国語を同時に100%習得するのは難しいという結果が分かりました。
それでも、2年間の海外の英語教育で、長女は①英語の聞き取り能力と発音の発達、②アルファベットの理解、③英単語の語彙の増加という結果が得られました。
逆に3歳ごろに帰国した次女は、日中は英語漬けの環境にいたにもかかわらず、現在は英語のほとんどをわすれてしまいました。
それでも、帰国後再び英語教室に通い始めると、比較的単語の聞き取りや発音の発達がスムーズな印象です。
それでは、それぞれの能力について詳しくみていきます。
聞き取り能力と発音の発達
長女、次女ともにもっとも伸びたのが、英語を聞き取る能力でした。
長女に関しては、英検4級レベルのリスニングは問題なくできるレベルです。
帰国後に子供たちは英語教室に通っておりますが、聞き取り能力が発達していたおかげで、英語を嫌がらず楽しんで取り組んでくれています。
子どもたちにとって、海外の幼稚園に比べると、断然日本の英語教室は難易度が低く感じるようです。
さらには発音がネイティブに近く、長女次女ともに私たち両親よりもずっと英語らしいのです。
アルファベットを理解した
長女は4歳でアルファベット(大文字)が一通りと、自分の名前を英語で書けるようになり、次女は3歳でアルファベットソングを正しく歌えるようになりました。
インターナショナル幼稚園では、毎日アルファベットを書く練習をしたり、フォニックス(アルファベッドの音)の練習を毎日繰り返していました。
そのため、アルファベットを日常的に使うことで、文字の習得にも積極的に取り組むことができたのだと思います。
長女はアルファベッドから単語の綴りに移行中ですが、フォニックスの理解があるためスムーズにできそうです。
語彙が発達した
語彙(ごい)とは、ある特定の範囲に使われる単語の総体を意味します。
- 1から10までの英語の数字
- 動物や色の名称
- 「欲しい(I want ~)」「来て(come)」「見て(look)」「やめて(stop it!)」などの動詞
こうしてみると、1~2歳児くらいの言葉に近いですよね。
子供たちは2年間の英語教育によって、2歳レベルまでの英語を獲得することができたのです。
海外の英語教育の成果まとめ
ドイツでの英語教育が、子供にとって英語学習の貴重な機会となったことは間違いありません。
英語がまったくできなかった私ですら、帰国後は外国人に英語で簡単な会話ができるレベルになったのです。
特に長女は、ドイツでは周りよりも英語ができない恥ずかしさを感じていましたが、帰国後の英語教室では「周りよりもできるんだ。ここでは間違ってもいいんだ。」という気持ちに変わり、楽しんで教室に通うようになりました。
- 海外で英語教育をしても話せるようになるとは限らない
- 英語を聞く力や理解する力は確実に成長する
- 帰国後の英語教育の自信と楽しみにつながる
英語教育をする上で親が気をつけること
本人が楽しめない状態で無理に英語教育をすすめると、恥ずかしさや間違いを恐れて、かえって苦手意識を持つようになってしまいます。
大切なことは、子供が英語を楽しみながら学ぶことです。
そうしているうちに、発音や単語、文脈を理解するようになっていきます。
子供が間違いを恐れずに言語を使うことの大切さを理解させることが重要です。
正しさよりもコミュニケーションの試みを積極的に褒めることで、英語を話すことにもつながっていきます。
ですので、お子さんが英語を獲得するには、10年~10数年と、長い目で見てあげるのも大切なことかもしれません。
駐在先の知り合いのお子さんの中には習得が早い子もいましたが、よその子と比べるとかえってお互いに苦しくなってしまいます。
英語が苦手な私に似たわが子でも、駐在前と帰国後では確実に英語力は大きく伸びました。
ただしあまりに幼いと次女のように忘れてしまうので、3~5歳の幼児期が英語を始めるベストなタイミングかもしれません。
家庭で楽しみながら英語に触れる本
最後に、我が家が家庭でも英語学習に触れるため使った絵本を紹介します。
当初英語を嫌がっていた子供たちも、これらの本は楽しんでおりました。
遊びながら英語に触れる絵本でもう一つおすすめなのがこちら。
ドイツの幼稚園の先生から勧められた本です。
これは上下にページが切れている仕掛け絵本です。
「Do you like catsup on your 〇〇?」(ケチャップを〇〇の上に乗せるの好き?)
というフレーズで、様々な組み合わせを楽しんで遊びます。
例えば、ケチャップを頭にかける組み合わせでは「No!」、帽子を乗せる組み合わせでは「Yes」と子供たちが反応してくれます。
これを繰り返すだけで、いくつかの英単語と「Do you like」のフレーズを覚えることができそうです。
他にも英語教育に役立つ記事を載せていきますので、よろしければ見ていってくださると幸いです!それでは!